IMG_6320 (640x480) 11月下旬、「ハラル」をキーワードにマレーシアに赴いた。訪問先から、「訪れたのは日本人初」と言われた2つの現場、「ハラルの分析機関」、並びに、マレーシアで最初に、且つ、唯一、港からエンドまでの「ハラル・ロジスティクスを構築した物流事業者の現場」を訪れた。私は、ハラルやハラル認証を語る立場にないが、“ロジスティクスイン”&“マーケティングイン”な視点だからこそ見えた、ハラルの最前線について雑感を記したい。
b24d457a 今回の訪問を通して、気づかされたことが“4つ”ある。

 まず、‘本国内で暮らすムスリムの人々(以下、「日本のムスリム」)は、さぞかし、生活がし辛いだろうということ、次に、◆屮魯薀襦廚箸いΩ斥佞髻単に、シャーリア法の規制、あるいは、流通させるためにクリアすべき手続き論と、浅い理解しか出来ていなかったこと、更には、ムスリムの人々が、居場所を問わず、ピュアな気持ちでハラルを守ろうとする思いの奥底にこそ、ハラルの真なる意味があると感じたこと、そして、ぁ屮魯薀襦瓮ぅ好薀犒とのビジネス=新規市場」と捉えがちな、日本国内のムードに違和感を覚えたことだ。

 “ハラル”という言葉を耳にしたとき、まず、日本人が最初に思いつくのは、「豚を食してはいけない」ということだろう。確かに、それがハラルの象徴に見える。しかし、物事はそう単純じゃない。ハラルの分析機関「UNIVERSITI PURTA MARAYSIA」で、そのことを思い知らされた。ここでは、ハラルについての詳細を割愛するが、この分析機関では、「Total Commitment Towards Halal Globalization and Enterprise」とそのMISSIONを持ち、そのVISIONを「Upholding the Sanctity of Halal Through Research and Services」と定義している。

15121201この分析機関を訪れ、真っ先に、驚いたのが、科学研究所としての設備が備えられ、DNAレベルでハラルの分析を行っていたことだ。分析機関のトップ、PROF. DATO’ MOHD. YAZID MANAP,から、科学的、学術的に体系だったハラルについての説明を受けた後、私のハラルについての印象は、ガラリと変わった。個々の項目の例示は避けるが、自身の専門分野において、これだけ(左画像)のプロセスにおいて、ハラルがチェックされる。「Halal Supply Chain」という表題を見たとき、衝撃を受けた。

IMG_6199 (640x480) (640x480) 今回のマレーシア訪問では、マレーシアで、最初に、且つ、唯一、港からエンドまでの「ハラル・ロジスティクス」を構築したマレーシアの船会社、MISCグループの「MILS COLD CHAIN LOGISTICS SDN BHD」の物流現場を訪れ、TAN CEOから「ハラル・ロジスティクス」についての説明を受け、現場を隈なく見て廻った。2005年、時の首相と掛け合い、総花的に取り扱う物流事業から、ハラル専門の物流事業者へと転換。「ハラル・ロジスティクス」の先駆けとなった。意見交換の場の「日本で、ハラル・ロジスティクスの構築を目指す人は、高い水準を追求し続けなければならない」という言葉の重みを痛感させられた。

01cd2d55 許諾を取ってないため、倉庫内に保管されている商品の写真は非公開とするが、日々、相当数の物流現場を廻る者として気づいた点が幾つかある。これらの点に、「ハラル・ロジスティクス」を構築した人たちが気づいているのかどうかは、正直、解らない。この場に記すことは避けるが、日本からイスラム圏の国々を目指す人たちのために、幾つか、モノの考え方を示したい。

 ある程度、ハラル・ロジスティクスを堅持した上で、日本−イスラム圏間の「ハラル」をキーワードにしたビジネスを目指す際、自ずと、目指すべき商材や企業(主体)の制約条件が整理され、かなり絞り込まれる。ハラル・ロジスティクスの現場、あるいは、スーパーやモールに溢れる商材を隈なく見ていくと、概ね、チャレンジすべきかどうか判断出来る。現地の食品に関する衛生管理の規制、消費者クレームの特性を掴めば、より正確な判断が可能になる。無論、個人ないしは零細企業レベルの物量の輸出入は別だ。

99a737bf ロジスティクスの観点から考えていくと、巷に蔓延する、「イスラム教が最大の宗教=有望な新規市場」という触れ込みにもとづき、最初に、「ハラル認証」と考えるのが、本当に、正しいのかどうか、冷静に判断する必要がある。一般論として、「食」に限らず、日本製の評価は海外で総じて高い。さりとて、「いいモノ=売れる」という、マーケティングゼロの思考では、ハラル以前の問題である。ゆえに、ハラル認証を検討する以前に、目指すべきイスラム圏の市場で、「そもそも、手掛ける商品のニーズはあるのか?」といった視点、言わば、商いの原点をキチンと見つめる必要がある。少し、冷静になるべきだ。


IMG_6209 (480x640) 端的にいえば、「ハラル認証を受けることはイスラム圏で売れることを担保することにはならない」。

 この点を冷静に考える必要がある。各イスラム圏の国ごとに求める、しかるべき「ハラル認証」は、あくまで、ムスリムの人たちが手にする商品としてスタートラインに立てることを意味しているに過ぎず、即座に、「ハラル認証=売れる」という図式が成り立つワケではない。

 ハラル認証を受けたから売れる・・・のではなく、そもそも、々發こ療戮杷笋譴襦福畫蟇の市場ニーズが想定され、尚且つ、ターゲット市場にブルーオーシャンな状況がある)もので、規模の経済性が働くロジスティクスコストを負担出来る物量のボリュームがあるか、または、ロジスティクスコストを無視して余りある高付加価値な競争力が高い商品で、ぅ拭璽殴奪箸箸靴童据える現地の市場開拓にかかる、中長期戦のマーケティングコストを負担出来る体力(財務力)がある会社。これらの条件を満たすもの(会社・商品)が、しかるべきハラル認証を受け、イスラム圏市場を目指すことが、疑う余地のないシンプルな考え方だ。もっとも、撤退判断が下手な日本人は、予め、撤退判断の基準を設定した方がいい。

IMG_6249 (640x480) 参考までに、(宗教要素要因を無視して)ハラルのご当地における食品物流の特徴を述べれば、「荷捌き」と「在庫管理」にとある特徴がある。無論、顧客の要求水準も、その証となるシステムもしかりだ。そして、この特徴は、クアラルンプールの人口が150万人(福岡市と同程度)であることと、会計処理上の事由から、現地における妥当性を満たしているのだろうと推察した。

 個人的な見解となるが、日本企業が“ハラル”と向き合いイスラム圏を見据える際、やはり、「最終消費者であるムスリムの人たちが、安心・安全に、商品を手にすることが出来る」という点を抜きには語れないと思う。端的にいえば、今の日本国内で散見される「ハラル議論」にはその視点が欠落している

IMG_6234 (640x480) 同時に、上記の視点、ビジネス的にいうならば、消費者起点の「サービス水準」が確保されるためには、イスラム圏の国家間における「ハラル認証制度」に関する統一見解、並びに、ハラルDBの共有、更には、国家間の見解の相違を調整する公式な場の形成が不可欠ではないかと考える。

 マレーシアが「ハラル認証制度」で突出しているとはいえ、人口は約3000万弱。同じく、台頭してきているイメージが強いドバイは、僅か160万。この2カ国を足しても3000万人強、対イスラム圏人口の僅か1.6%しかない。しかも、経済力、貨幣価値のギャップがある。尚且つ、イスラム圏の国々のコンセンサスが為された認証制度が確立していないのに、目の前に見えている事象だけで約16億人のイスラム圏における「ハラル市場」の全体像を判断するのは、些か、拙速ではないか・・・との懸念が拭えない。

IMG_6353 (480x640) TPP、その他の国際的な経済連携に注目が集まり、国家間の“思惑”が錯綜する事柄であるだけに、各国の輸入関税や、外資の進出規制、あるいは、政治リスクなどを踏まえると、単独で国内市場に魅力がある人口が多い国を除けば、イスラム圏への足がかりにする国を決めるのは、時期尚早ではないか・・・というのが率直な感想だ。

 また、仮に「ハラル」をキーワードにしたとしても、地方創世・クールジャパン・6次化・TPPなどの言葉の後押しを背景に、果たして、取り扱う商材が、注目が集まりやすい「食」なのか・・・? ハラル・ロジスティクスの現場、マレーシアの店頭に並ぶ商品を眺めると、まだまだ、熟考の余地はある。こと、マレーシアの市場だけに限れば、このタイミングで日本が出していく商品は、必ずしも、「食」ではない。これが、ロジスティクス&マーケティングの視点でマレーシアの“現場”を歩いた率直な感想だ。

IMG_6349 (640x480) 最後に、精神論的なニュアンスが多分に入ってしまうが、ハラル・ロジスティクスの現場を構築してきた人たちに心耳を澄ませば、日本からマレーシアへのモノの動きありきでハラル市場を紐解くのではなく、まずは、その機運が高まりつつある、マレーシアから日本へのモノの動きを確立し、その帰り荷的な位置づけで、誇るべき日本の商品を、マレーシアの人たちのもとに運ぶ・・・と考えた方が自然ではないだろうか。まずは、相手を受け入れてこその輸出、“相思相愛”なモノの流れこそ、日本が目指すべき道・・・だと、思ってならない。


 これが、日本人で初めて、ハラル・ロジスティクスの現場を歩いたからこそ見えてきた光景だ。

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 *文中の記載は、【ハラル】で統一した。他に、【ハラール】【Halāl 】などの表現がある。
 *ハラル認証については、様々な団体があり、論ずべき立場にないため説明は割愛した。
 *本文は、ロジスティクス&マーケティングの視点で、ハラルの最前線を見た感想である。
 *ゆえに、「ハラル認証コンサルティング」等を手掛ける意図を持って記載したものではない。