日雇い派遣を原則禁止、厚労相が法改正案提出を表明」(読売新聞)

 この二ヶ月、当ブログで1〜2回取り上げた程度だが、“日雇い派遣”の問題をウォッチし続けてきた。ブログには書いたことは無いが、何社もの日雇い派遣事業者の方々と会い、“ワーキングプア”の元凶と誤解されている物流倉庫にも足を運んだ。そして、私なりの考え方を、嘗て、労働基準監督署で責任ある立場にいた方にぶつけたこともある。
 そのような二ヶ月間を過ごしてきた者として、今回の桝添厚生労働大臣のご発言は、甚だ、遺憾に思う。果たして、桝添大臣は、一度くらい物流倉庫や建設現場などの“現場”に足を運んだのだろうか?

 日雇い派遣労働者と向き合って話したのだろうか?

 私は、大いにそのことを疑問に思う。

 “日雇い派遣”に関連する様々な現場を廻り、自身の目で現実を直視してきた者として、“日雇い派遣”業者を悪玉に仕立て上げ、厚生労働省に対する数々の不満の矛先を逸らし、課題とその原因の因果関係を立証することなく“日雇い派遣”を禁止する流れには、声を大きくして“異議”を唱えたい。

 “日雇い派遣”を禁止した結果、日本社会から“ワーキングプア”が無くなることなど有り得ない。職の経路を失った労働者たちは、単なる“プア”になるか、あるいは、山谷(東京)・釜ヶ崎(大阪)・寿町(横浜)・高田の馬場(東京)などを跋扈する、存在そのものが非合法の“手配師”の手に労働者を委ね、労働者の安全・衛生管理などを度外視した危険な現場に送り込まれるだけの話である。日雇いに関する“労働者の問題”の根っこがより深く、闇が深くなり、一般社会から隔絶されたアンダーグランドな存在として葬りさられることにしかならない。

 メディアを覆い尽くす“さもありなん”というストーリーと、その出口としての“日雇い派遣”禁止という落としどころは、現場に足を運ぶことなく机上の空論の論理を並べ立てる“厚生労働省の官僚”が作り上げた“幻想”でしかない。

 と同時に、“ワーキングプア”の問題、あるいは、“派遣労働者による狂気的事件”は、“日雇い派遣”を禁止することで何ら改善しない。

 “日雇い派遣”に関する労働の課題点のあるべき姿は、様々なライフスタイルや価値観が存在する現代社会の“多種多様な労働のあり方”を容認し、上っ面ではなく、労働者が安全で衛生的に働けるような環境を構築すること、即ち、“新しい労働管理”のあり方を希求することでしか改善しない。

 そして、それらを成しえるためには、発注者に“労働安全衛生法”を適用すること、具体的には、物流現場で言うならば、派遣先(元請・下請・孫請)、派遣元(各派遣会社)が、労働者が安全で衛生的に働けるようなコンプライアンスコストを捻出できるように、業界の多層構造を出来る限り平たくするか、あるいは、前述のプレイヤーが十分にコンプライアンスを果たせる賃金を発注者が担保することである。最終的には、発注者(荷主)に労働者の安全・衛生管理義務を負わせることが賢明である。

 また、感情的に議論される“ワーキングプア”の問題は、本来、社会保障の問題、あるいは、本質的には“貧困問題”として議論されるべき“セーフティーネット”の問題であり、“日雇い派遣”の禁止という直接的に因果関係の無い“派遣業法改正”に帰結させることは間違っている。

 官僚に踊らされたメディアと呼ばれるエリート達が思い描く「日雇い派遣で働いているから生活が不安定であり、そのために家を借りられず、正規雇用の仕事につけない…」というストーリー…。

 しかし、冷静に考えて欲しい。

 日雇い派遣で働く人たちの全てが夢の無い人ではない。

 中には、自分の夢のために“日銭”を稼ぐ人がいる。

 果たして、9万人と言われる“日雇い派遣”労働者の何%の人が、マスコミが疑わないストーリに合致する人たちなのか?

 私は、大半がそうではないと考えている。

 一方で、ストーリーに合致する人たちもいる。

 しかし、何故、彼らが、日雇い派遣で働くことになったのか?

 どのメディアもそのことを伝えていない。

 日雇い派遣事業者の中には、労働者の自立を促すことを目的として、賃金を蓄えることをサポートしている事業者もある。

 その結果として、日雇い生活から抜け出せる人もいれば、そうで無い人もいる。

 後者のなかには、全ての人では無いものの、財布の中に、キャッシングのカードが溢れていたり、あるいは、ブラックリストに掲載されている現実がある。

 中には、本名を名乗れない人もいるのだろう。

 つまり、往々にして、日雇い派遣以前の別の問題が存在するのである。

 にも関わらず、行政や政治家が、“ワーキングプア”の現実を自らの目で直視する(確認する)こともなく、厚生労働省への様々な不満の矛先を逸らすためだけに、“日雇い派遣事業者”をスケープゴートにすることは、単なる“責任転嫁”であり、厚生労働省の“欺瞞”でしかない。

 もし、“日雇い派遣”を禁止することで、社会が良くなり万々歳であると考えている政治家やメディアがいるとするならば、最早、パロディーである。

 私は、“日雇い派遣”の問題が、本質的に掘り下げらて議論されることもなく、感情論に終始して議論されている現状に“異議”を唱えたい。